キスから始まる方程式
「よおっ、七瀬っ」
「桐生……君……っ!?」
桐生君の周りにいる女の子達の視線が、一斉に私に突き刺さる。
「え~っ? あれって冬真の彼女じゃない?」
「やっだ! 今年冬真と一緒のクラスなの!?」
「うっわ、やりづら~っ」
敵意丸出しの視線で、好き勝手言いたい放題声を潜めて話す女の子達。
そんな彼女達に心の中で「全部聞こえてるんですけどっ」と怒りのツッコミを入れながら、とりあえず口を開いた。
「お、おはよ」
たった一言それだけ返事をし、落とした鞄を拾い上げそのまま自分の席へと向かう。
えっ? えぇっ? えぇ~っ? だって桐生君文系志望だったよね!? それなのになんで理系クラスにいるの!?
ってか、いったいあの女の子達はなに!? 桐生君の周りって、いっつもあんななの!?
我が月島高校は一応進学校なため、二年生からは生徒達を完全に文系志望と理系志望でクラスを分けてしまうシステムをとっている。
ちなみにA~E組までが文系、F~H組までが理系だ。
二年の時はC組だった桐生君が私と同じクラスになるというのは、志望先を変えれば不可能ではないが、それでもかなり珍しいケースといえるだろう。