キスから始まる方程式


「七瀬、なんで行っちまうんだよ」

「っ! ちゃんと挨拶したでしょっ」

「……っ。なんか七瀬、すっげー怒ってる?」

「べべべ、べつに怒ってなんか!」



明らかに不機嫌な私に、桐生君が怪訝そうな顔で覗き込んでくる。



「もしかして七瀬、俺が女の子達と話してたから……妬いてんのか?」

「なっ!? や、妬いてなんかないもんっ!」



おもいっきり図星を突かれ、真っ赤になって動揺する私。


対して桐生君は、そんな私のことをなにやら嬉しそうにニヤニヤと見つめている。



「だいたいなんで文系志望だった桐生君が、私と同じ理系の教室にいるのよっ」

「あ~俺、三年から理系志望に転向したから」

「はいっ!? なんで今更理系に変更したの!? ついでに、なんでそれを私に隠してたのよっ」

「そんなの、七瀬と同じクラスになりたかったからに決まってんじゃん。
隠してたのはだな~、単に七瀬のことを驚かそうと思ってさ」



悪びれる様子もなくサラリと言ってのける桐生君。


おまけに、ニカッととびきりの笑顔まで見せている。
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