キスから始まる方程式


「七瀬……」

「麻優ほらっ、次の授業始まっちゃうよ?」



それでも何かを言おうとする麻優の背中を無理矢理押し、もう一度「大丈夫だから」と呟き手をヒラヒラと振った。



「うん……それじゃまたあとで……」

「うん、またね」



名残惜しそうな麻優の後姿を見送りながら、膝に置いたままの手をギュッと握りしめる。



『私のこと待っててくれなかったんだね』



工藤さんの言葉と、桐生君が工藤さんの手を引いて出て行ってしまった姿が頭の中に焼き付いて離れず、胸がズキズキと痛んだ。



「『気にしなくていい』なんて、そんなの無理だよ……」



誰にも聞こえない小さな声でひとり呟く。


結局その後、午前中の授業に桐生君と工藤さんが姿を見せることはなかった……――
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