キスから始まる方程式
* * * * *
桐生君……まだ戻ってこない……。
主がいない隣の席をぼんやり見つめながら、小さな溜め息をつく。
もうすぐ昼休みが終わり5時限目が始まるというのに、いまだに桐生君も工藤さんも教室に戻っていなかった。
二人だけで、どこで何してるんだろう……。
今こうしている間も二人きりでいるのかと思うと、なんともいえない焦燥感に駆られ胸の奥がジリジリと疼く。
午前中も二人のことがずっと気になって、とても授業どころではなかった。
キーンコーンカーンコーン
モヤモヤとした思いを抱えたまま、無情にも昼休み終了を告げる鐘の音。
やっぱり、今日はもう戻ってこないのかな……。
そう思って俯いた時、ガタンッと隣の席から音が聞こえてきた。
「っ!」
慌てて隣を振り仰ぐ私。
そこには、息を弾ませ額に汗を浮かべながら席に着く桐生君がいたのだった。