キスから始まる方程式


* * * * *



桐生君……まだ戻ってこない……。



主がいない隣の席をぼんやり見つめながら、小さな溜め息をつく。



もうすぐ昼休みが終わり5時限目が始まるというのに、いまだに桐生君も工藤さんも教室に戻っていなかった。



二人だけで、どこで何してるんだろう……。



今こうしている間も二人きりでいるのかと思うと、なんともいえない焦燥感に駆られ胸の奥がジリジリと疼く。


午前中も二人のことがずっと気になって、とても授業どころではなかった。




キーンコーンカーンコーン



モヤモヤとした思いを抱えたまま、無情にも昼休み終了を告げる鐘の音。



やっぱり、今日はもう戻ってこないのかな……。



そう思って俯いた時、ガタンッと隣の席から音が聞こえてきた。



「っ!」



慌てて隣を振り仰ぐ私。


そこには、息を弾ませ額に汗を浮かべながら席に着く桐生君がいたのだった。

< 301 / 535 >

この作品をシェア

pagetop