キスから始まる方程式
戻って来た……っ!
制服のジャケットを脱ぎワイシャツの袖をまくり上げる桐生君の姿に、トクンと鼓動が音を立てる。
額から頬へ流れ落ちる汗がなんとも妖艶で、更に私の胸をキュンと締め付けた。
すごい汗……。午後の授業に間に合うように、急いで走って来たのかな……。
そういえば……と、工藤さんの席に視線を移すと、いつの間にか彼女も席に着き、きちんと次の授業の準備を整えていた。
同じタイミングて帰ってきたってことは、やっぱり午前中ずっと一緒にいたんだ……。
再びチリッと胸の奥が嫉妬で疼く。
そんな痛みを抑えるように目をキュッと閉じた時、5時限目の数学担当の笹井先生が教室へと入って来た。
「きりーつ! 礼っ」
学級委員のお約束の号令で、授業がすぐさま開始される。
あ……、数学の授業の準備してなかった……。
考え事ばかりして教科書も何も机の上に出していなかった私は、慌てて机の中から数学の教材を取り出した。