キスから始まる方程式
私、なんであんなこと言っちゃったんだろ……。
今日こそはって思ってたのに……。
怒涛のように押し寄せる後悔の念に、胃がきゅうっと痛くなる。
自分の中のつまらない意地や見栄があまりにも滑稽で、心底自分自身が嫌になった。
「あ……の……七瀬……?」
きっとものすごく情けない顔をしていたのだろう。
いつの間にか麻優が心配そうに瞳を揺らしながら、呆然と立ち尽くす私の隣で顔を見上げていた。
「麻……優っ……」
「大丈夫? 桐生君のこと、追いかけなくていいの?」
「っ! …………」
ストレートな麻優の問いかけに、一瞬言葉につまる私。
「私に嘘をついてもお見通しだからね!」と言わんばかりの麻優の瞳に、おもわず本音がポロリと零れた。
「だって……桐生君がどこに誰と行こうと、それがどんなに嫌でも私には止める権利なんてないもん……」
「七瀬……」
言葉に出したことで自分の不甲斐なさが更に重みを増し、自然と視線が床へと落ちた。