キスから始まる方程式
「それにさ、桐生君に聞いてもちっとも教えてくれ……っ! あわわっ」
「ん?」
途中まで何かを言いかけて、突然慌てて口をつぐむ麻優。
「麻優、どしたの?」
「えっ!? あはは、な、何でもないよっ」
「? そう? ……ならいいけど」
「えへへっ」
そう言ってクリクリの目をパチパチさせながら、「そういえば」と思い出したように話題を切り替えてきた。
「ねねっ、七瀬明日誕生日でしょ? プレゼント渡したいから、明日の朝いつもより早めに学校来てねっ」
「? プレゼントを渡すためだったら、無理して朝早く来なくても大丈夫だよ?
早起きするの、麻優も大変でしょ?」
「えっ!?」
私の何気ないツッコミに、こちらがビックリするくらい動揺する麻優。
「あの、え~っと……だ、大事な親友の誕生日だもんっ。
少しでも早く七瀬に『おめでとう』が言いたいじゃんっ」
またしてもエヘエヘと笑いながら、麻優が私の背中をバンバンと叩いてくる。
「そっか。うん、ありがとね麻優」
「あはは! あ、明日が楽しみだねっ」
なんだか落ち着かない麻優を不思議に思いながらも、麻優の純粋な優しさが嬉しくて沈んでいた心がジンと温かくなった。
「ささっ! 着替え終わったんなら早く帰ろ、帰ろ!」
「うん、そだね」
そう言ってちょうど制服のリボンを付け終えた私の背中を強引に押す麻優。
桐生君と誕生日を一緒に過ごしたかったけど……仕方ないよね……。
寂しいけれどやっとのことでそう思い直した私は、麻優と一緒に今度は楽しい話をしながら家路についたのだった。