キスから始まる方程式
* * * * *
さすがにこの時間は人が少ないな。
学校の玄関で靴を脱ぎながら、チラリと周りを見回す。
時間が7時半ということもあり、朝練以外で登校する生徒はまだほとんどいなかった。
カタン
「あれ……?」
靴をしまおうと下駄箱の扉を開けると、なにやら小さな袋が目に飛び込んで来た。
なんだろう? そういえばいつもの嫌がらせの紙も、なんでか今日は入ってない……。
……はっ! まさか嫌がらせがバージョンアップして、この袋の中に悪口が書かれた紙が大量に入ってるとか!?
嫌な予感を胸に、恐る恐る袋を下駄箱から取り出す。
よく見るとそれは可愛らしい花柄の小さな紙製の袋で、更に袋の右上部分には小さな花の飾りまで付いていた。
これって……どう見ても嫌がらせっぽくないけど……。
……あっ! もしかして中身と外見の落差を激しくして、より一層私にダメージを与えようってゆ~作戦なのかも!?
どこまでも疑い深い私。
その手には乗らないからねっと、とりあえず私は袋の中身を確認することにした。
袋の入り口をとめている、これまた可愛らしいハートの形のシールを丁寧にはがし、ゆっくりと中を覗き込む。
「え……?」
しかし袋の中に入っていたのは、大量の紙切れなどではなく意外にも小さな人形だった。