キスから始まる方程式



* * * * *



さすがにこの時間は人が少ないな。



学校の玄関で靴を脱ぎながら、チラリと周りを見回す。


時間が7時半ということもあり、朝練以外で登校する生徒はまだほとんどいなかった。



カタン



「あれ……?」




靴をしまおうと下駄箱の扉を開けると、なにやら小さな袋が目に飛び込んで来た。



なんだろう? そういえばいつもの嫌がらせの紙も、なんでか今日は入ってない……。


……はっ! まさか嫌がらせがバージョンアップして、この袋の中に悪口が書かれた紙が大量に入ってるとか!?



嫌な予感を胸に、恐る恐る袋を下駄箱から取り出す。


よく見るとそれは可愛らしい花柄の小さな紙製の袋で、更に袋の右上部分には小さな花の飾りまで付いていた。



これって……どう見ても嫌がらせっぽくないけど……。


……あっ! もしかして中身と外見の落差を激しくして、より一層私にダメージを与えようってゆ~作戦なのかも!?



どこまでも疑い深い私。


その手には乗らないからねっと、とりあえず私は袋の中身を確認することにした。




袋の入り口をとめている、これまた可愛らしいハートの形のシールを丁寧にはがし、ゆっくりと中を覗き込む。



「え……?」



しかし袋の中に入っていたのは、大量の紙切れなどではなく意外にも小さな人形だった。
< 319 / 535 >

この作品をシェア

pagetop