キスから始まる方程式
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「そっかぁ!それじゃあ無事に桐生君と仲直りできたんだね!」
「うん、麻優のおかげだよ。ありがとね」
エヘヘと照れ笑いをしながら、麻優が程よく焼き目の付いた卵焼きをパクリと頬張った。
ここはお昼休み真っ只中の教室棟の屋上。
今日は天気がよく青空が気持ちよかったため、キラキラ輝くお日様の下でお弁当を食べることにしたのだ。
「それにしても……」と私は、改めて今朝の出来事について麻優に問いかけた。
「なんで麻優が桐生君に協力することになったの? 桐生君は詳しく教えてくれなかったけど……」
「あ~、それはね……」
ニヒッと白い歯を見せながら、麻優が言葉を続ける。
「この前の日曜日、デパートに七瀬の誕生日プレゼント買いに行ったんだ」
「うんうん」
「何にしよっかな~って色んなお店見て回ってたら、偶然アクセサリーショップで桐生君見つけちゃってね」
「ふむふむ、それでそれで?」
「でね、これはもしかしてって思って七瀬の誕生日プレゼント?って声掛けたの!
そしたら桐生君、ちょっと考えてから、七瀬にプレゼント渡したいから協力してくれないかって」
なるほど。そーゆーことだったのか。
「うん。でも桐生君、せっかく協力してあげたのに“七瀬のお気に入りの場所”も、工藤さんとの関係も聞いても全然教えてくれないんだよ~っ」
ぷぅっと頬を膨らませながら、ちょっと怒ったようにフォークをグサリと唐揚げに突き立てる麻優。
そのままガブリと豪快にかぶりつきながら、「あっ!」と何か思い出したように慌ててそれを数回噛んだだけで飲み込んだ。