キスから始まる方程式
「そうだそうだっ、肝心な私からのプレゼント、まだ渡してなかった」
「え? プレゼントって、桐生君のことじゃなかったの?」
「ん~、まぁそれもプレゼントではあるけど、私もちゃんと七瀬のために用意したんだよ」
そう言って麻優は、鞄の中から赤と白のギンガムチェック柄の包装紙に包まれた小さな箱を取り出した。
「これ、私に?」
「うん! 開けてみて開けてみてっ」
クリクリの目をキラキラ輝かせてこちらを見つめながら、ワクワク顔で麻優が促す。
留めてあるテープをキレイにはがし出てきた箱を開けると、色とりどりのマカロンやケーキなどの可愛らしいスイーツで枠が縁どられた写真立てが姿を現した。
「うっわ~! かっわいい!!」
「でっしょ~! あまりにも可愛くて、私もおそろいの買っちゃったんだっ」
ニコニコと満面の笑みを浮かべながら、麻優が嬉しそうに声をあげる。
「ありがとね麻優! 大事にするね」
「うんっ!」
私もニッコリ笑顔でお礼を言うと、エヘヘ、と麻優がはにかみながら微笑んだ。
……ん? ってことはやっぱり、下駄箱に入ってたくまんちゅのマスコットは麻優からのプレゼントじゃないんだ。
ふと今朝の限定くまんちゅマスコットが頭の中をよぎる。
それならいったい誰が……?
う~ん……と首を捻って考えていると、麻優が突然「でもさぁ」と真面目な声音で言葉を続けた。