キスから始まる方程式


「桐生君近過ぎ! それに見過ぎだってば!」

「んあ? ……っと、ぐおっ!」



不意の私からの攻撃にバランスを崩した桐生君は、あっけなくその場にドサッと尻餅をついた。



「っててぇ……。おまっ、なにも突き飛ばさなくても……」



したたかに打ち付けたお尻を痛そうにさすりながら、桐生君がよろよろと立ち上がる。



「だってその……足太いから見られるの恥ずかしいんだもん……っ」



真っ赤な顔で唇を尖らせながら呟く私に、桐生君が呆れ顔で口を開いた。



「お前な~、いっつもミニスカートはいてんのに、なんで今更恥ずかしがんだよ」

「うっ……」

「それにいくら俺でも、こんな教室のど真ん中でいきなり襲ったりしねーよ」

「お、おそっ、襲うっ!?」



想像以上の過激な発言に、口をパクパクさせながら動揺する私。


そんな私を見てニヤリと意味ありげに微笑んだ桐生君が、突然腰をかがめて私の耳元に顔を寄せた。



「それとも、七瀬は襲ってほしかった?」



……っ!!



小さいけれど艶のある、色気さえ感じさせる声で囁かれ、熱かった顔が更にボンッと沸騰する。


胸の鼓動が激し過ぎて、このまま心臓がオーバーヒートしてしまいそうだった。
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