キスから始まる方程式
これって、この前左足を怪我した時の……だよね。
写真をよく見ると、そこには体操服姿の翔が制服姿の私を背負っている様子が写っていた。
しかも写真の下にはご丁寧にも“結城七瀬は二股サイテー女”と、わざわざ中傷の言葉まで書き添えられている。
う……。これは確かに、私と翔が幼なじみだってことを知らない人が見れば勘違いするかも……。
そんな弱気な考えと共に、徐々に沸き上がってくる激しい怒り。
いくら私のことが嫌いだからって、こんな卑怯なやり方で翔までまきこんで私を陥れようとすることがどうにも許せなかった。
それにしても、いったい誰がこんなこと?
やっぱりこの前私をリンチした子達?
それとも……
一瞬私の頭の中をよぎる工藤さんの顔。
しかしいくらなんでもあの場面に彼女が偶然出くわすなんて、可能性としては考えにくい。
「結城って意外に軽い女だったんだな」
「冬真君かわいそ~!」
「絶対許せないよね~」
―― ズキン
事情を知らない生徒達の心ない言葉が、容赦なく私の胸に突き刺さる。
普段は人になんと言われようがあまり気にならないのだが、なにぶん今は昨日の工藤さんの一件で私の精神はすっかり弱りきっている。
そんな時に受ける言葉の暴力というのは、思いの外ダメージが強いもので……。
私が……なんとかしなくちゃっ……。
それでもどうにか、挫けそうな心を奮い立たせる。
周囲の凍てつく視線をビリビリと感じながらも、私は懸命に震える手を写真へと伸ばした。