キスから始まる方程式
ダメ……、ダメだよこんなの……っ
とにかくなんとかしないと、というただその一心で、背後にいた翔にすがりつく。
「翔っ、南條さん誤解しちゃってる! お願い、早く追いかけてっ」
私に言われるまでもなく、当然すぐさま翔が南條さんのあとを追いかけると思っていたのだが……。
「……いいんだ」
「え……?」
しかし翔から返ってきたのは、想像もしていなかった言葉だった。
翔、なに言ってるの?
「……? 何がいいの!? 全然よくないよ!」
「……」
けれど翔は、私から目を逸らしたまま頑なに口を結び答えない。
「ダメだよっ」
あれ……? おかしいな……。
「私のせいで……二人が……ケンカするなんて……っ」
急に……体がフワフワする。
なんだか、足に力が入らないよ。
「おいっ、七瀬?」
「ダメ……っ、だよ……」
目の前がどんどん真っ暗になってきちゃった……。
「七瀬、どうしたんだよ七瀬!」
翔の声がどんどん遠く……なって……
「そんなの……ダ……メ……っ」
「七瀬っ!?」
バタンッ
そして次の瞬間、私は真っ暗な闇の中に意識を手放したのだった。