キスから始まる方程式
この声……知ってる……。 でも、誰だったろう?
懐かしい声に誘われるように、ゆっくりと背後を振り返ると
「七瀬」
声の主は切れ長の瞳を優しく細め、ニッコリと微笑んだ。
「あ……。 桐……生……君……?」
あぁ、そうだ……。私の大事な人だ。
「七瀬」
更に別方向からも聞こえてくる、私の名を呼ぶ声。
「翔? それに……麻優?」
いつの間にか私は大切な人達を思い出し、彼らに囲まれていた。
「みんな、こんなところでどうしたの?」
彼らに会えた安堵感と喜びで、ウキウキと笑顔で問いかける。
「ここはなんだか寂しくて怖いよ。 早くもっと温かい場所へ行こう?」
しかしそんな私に返ってきたのは、困ったような彼らの笑顔。
「なんで? なんでみんな、そんな顔するの?」
先程までの安堵感が一変、徐々に不安へと変貌する。
「七瀬……ごめん……」
そして一番聞きたくなかった謝罪の言葉。
気が付くと、桐生君の隣には工藤さんが。
翔の隣には南條さんが、それぞれ笑顔で寄り添っていた。