キスから始まる方程式
「ごめん。ごめんよ、七瀬……」
そう言って、私からどんどん遠ざかって行く桐生君や翔達。
「や……だ……」
必死に手を伸ばして掴もうとするけれど、その指先は虚しく空を切るばかり。
「七瀬、どうして私に隠し事してたの?」
悲しみに打ちひしがれる私に、立て続けに届く寂しげな声。
慌てて振り返る私の瞳に映ったのは、酷く悲しげな眼をした麻優だった。
「七瀬のこと、信じてたのに……」
そう辛そうに呟いて、私に背を向ける。
「麻優、違うの! 私、そんなつもりじゃ……っ」
しかし、待ってと叫ぶ私の声に振り返ることなく、麻優も遥か彼方へと消えて行く。
「お願い……っ、待って……!」
やだ……っ
「みんな……、みんな……私から離れて行かないで……っ」
一人ぼっちは寂しいよ……
「おね……がい……一人にしないで……」
ずっと……そばにいて……
誰もいなくなった空虚な世界に、ただ私の声だけが静かに吸い込まれていった―――― ……