キスから始まる方程式
「違うよ麻優。謝らなくちゃいけないのは私のほうだよ」
「え?」
真っ赤な目をした麻優が、子供のように私を見上げる。
こんなに目が腫れるほど、私のために泣いてくれたの?
「麻優はいつだって私に真っ直ぐにぶつかってくれてたのに……。
それなのに私は、麻優のためだなんて勝手に思って、全部自分の中にため込んでた」
「ひっく……七瀬……」
「もし私が麻優から同じことされてたら、何で頼ってくれなかったの? って、すごく悲しかったと思う。
ちょっと考えれば、そんなのすぐわかったはずなのに……」
そう……。なのに……なのに私は……。
「ごめんね、麻優……」
「うぅっ……七瀬……っ、七瀬~っ!!」
麻優が激しく顔を左右に振りながら、再び私の胸に顔を埋める。
私の目頭もジワリと熱くなり、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「麻優、ごめんねっ」
「ううん、あたしのほうこそごめん~……っ」
互いに互いを思いながら、抱き合って泣く私と麻優。
「麻優~っ」
「七瀬~っ!」
そんな盛り上がり最高潮の私達の脇から
「あ~……コホン」
少々ばつが悪そうに割り入る誰かの声。
慌てて目元をぬぐい顔を上げると、養護教諭の大内先生が白いカーテンの隙間から顔を覗かせていた。