キスから始まる方程式
絡み合った糸がほどけるどころか、どんどん複雑にもつれて行く。
悩み事が解決する前にどんどん新たな問題が発生し、私の頭の処理能力ではとても追いつくことができない。
そんなサーバーダウン寸前の頭で考えたところで、当然的確な答えなんて見つかるはずもなくて。
藁にもすがる思いで見上げた視線の先に映る、桐生君の後姿。
いつもならすごく頼りがいがあって安心できるその背中が、なぜだか今日はむしろ拒絶されているようにさえ感じられて、私の中の不安はどんどん大きさを増すばかりだった。
桐生君は、翔のことどう思ったのかな……。
あれから5分程経つのだが、桐生君は相変わらず前を向いたまま無言で歩くばかりで、その表情さえ窺い知ることが出来ない。
あれ程ガッチリ掴まれていた手も、今はもう私から離れてしまっている。
翔からあれだけハッキリ宣戦布告されたのに……。
それなのに何も聞いてこないのは、やっぱり私のことなんてどうでもいいってことなのかな……。
そう思った途端、ズキリと痛む私の胸。
桐生君から貰ったネックレスが、私の心のように胸元でゆらゆらと揺れている。
それが肌に触れる度、まるで桐生君の気持ちを代弁するかのように酷く冷たく感じられて、益々私の不安をあおるのだった。