キスから始まる方程式


「ホ……、ホテル行こうよ!」



なぜこんなことを言ってしまったのか、自分でもよくわからない。


ただ工藤さんに張り合いたかっただけなのか、それとも桐生君を繋ぎとめたかったのか……。



わざわざ顔を上げなくても、桐生君が驚きのあまり息を呑んでいるのが伝わってくる。



そして当然のことながら桐生君から返ってきたのは



「おまっ、いきなりどうしたんだよっ」



驚きと戸惑いに満ちた狼狽の声。


こんな状況でそんなことを言われれば、誰だって桐生君と同じ反応をするだろう。


けれど私の頭の中は、そんなことさえ理解することができない程グチャグチャに乱れていて……。



「い、いきなりじゃないもんっ。 私達、付き合い始めてからもう4ヶ月も経つんだよ?」

「そりゃそうだけど……っ。 お前、自分が何言ってるのか、ちゃんとわかってんのか?」



明らかに呆れて困惑する桐生君。



「っ! わかってるよ! 私、そんなに子供じゃないもんっ」

「わかってないだろ! わかってたら、んなことこんな時に言うかよ」



言葉の端々に苛立ちさえ感じられる。


そんな桐生君の態度に、なぜだか自分が拒絶されているように感じた私は、たまらなくなっておもわず顔を上げた。

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