キスから始まる方程式


「工藤さんとならいいのに……私じゃだめなの……?」

「っ!? なっ、なんでここで凛が出てくんだよっ」



無意識に口をついて出てしまった私の本音。


けれど……



「七瀬……やっぱ今日のお前、どっかおかしいよ……」



失望に染まった桐生君の瞳に、私が映る。



……っ!? やだ……っ。 私今、こんな情けない顔してたの……?



桐生君の瞳を通して知った己の今の姿に、愕然とする私。



「……そ……だね……。あはは……。やっぱ私、今日変みたい……っ」

「……七瀬?」



体が……震える。



私……っ、なんてバカなこと言っちゃったんだろう……っ。



ようやく自分の発言の愚かさに気が付いたけれど、もう何もかもが手遅れで。


猛烈に襲ってきた恥ずかしさと情けなさに、ついに耐え切れなくなった私は



「ごめんっ、さっき言ったこと冗談だから……っ」

「え……? あ、おいっ、待てよ七瀬っ!」



自分なりの精一杯の虚勢を張り、その場から逃げるようにして降りしきる雨の中駆け出したのだった……――

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