キスから始まる方程式
そういえば以前はよく麻優から「まだ風間君と付き合わないの?」なんてからかわれたりしたっけ。
麻優でさえ翔の気持ちに気付いていたのに……。
それなのに、当の本人である私が……しかも、あれ程長い間翔のそばにいながら気付けなかったなんて。
あまりの自分の鈍感さに、今更ながら愕然としてしまう。
もしもあの時翔の気持ちに気付けていたら、私の未来も今とは違うものになっていたのだろうか……?
ペチン
「っ痛!?」
その時突然、なぜか私の額に麻優のデコピンが飛んできた。
「こら! 七瀬今、『もしもあの時風間君の想いに気付いてたら……』な~んて思ってたでしょ」
「う……っ」
ギクッ
相変わらず勘の鋭い麻優が、これまた見事に私の気持ちを言い当てる。
「ダメだよそれっ。七瀬の悪い癖!
もしあの時ああしてれば……、もしあの時こう言ってれば……。
そんなこといっくら考えたって、過ぎたものはもうどうしようもないんだから」
「うん」
「恋愛に“if”は無いの! どれだけ後悔したって、もう過去には戻れないんだし」
いつになく真剣な表情をした麻優が、更に続ける。