キスから始まる方程式
「今日は何歌おっかな~。あ、この前発売されたお気に入りの曲、もう入ってるかな~?」
持っていたトレイを所定の位置に片付けた麻優が、嬉しそうにはしゃぎだす。
「ねねっ、七瀬は何歌うの? やっぱ今日は激しいのいっちゃう?」
「アハッ、どうしよっかな。ガンガンのヘビメタなんかいいかも」
「ヘビメタ!? うっわ七瀬、ヤル気マックスだね~! んじゃ私も、一緒に首振ったげるよ」
「うわ~、明日首筋肉痛になってそう」
キャラキャラと女子高生らしく談笑しながら店を出ると、早速駅前のカラオケボックスへ向かうことにした。
「あーでも、こんな時こそ逆にコッテコテのバラードってのもいいかもなー」
「わかるわかる! こーゆー時って、メチャクチャ歌詞に共感してどっぷり入り込んじゃうよねっ」
余程楽しみなのか、麻優が先を急ぐように小走りに駆け出す。
「ほら、七瀬早く早く~! ここのところケガで部活休んでたから、すっかり体がなまっちゃったんじゃない?」
「えー!? たった一週間だけなのに?」
「その一週間が大きいん……だって……。……っ!?」
「そーかなー……って……えっ!?」
その時、前を歩いていた麻優がなぜか急に立ち止まった。