キスから始まる方程式
「あは……。二人とも、すっごくいい表情してる。笑顔が輝いてるってゆーか、幸せそうってゆーか」
「でも……っ」
「美男美女だし、どっからどう見てもお似合いだよね。
長い間二人とも、お互いのことあんなに想い合ってたんだもん。
私なんかが入り込む余地なんて……どう頑張ったって、これっぽっちもないよね……」
「七瀬……」
よかった……。
麻優が一緒にいてくれて、本当によかった。
「私は……私は大丈夫だよ? この前桐生君にホクロがあるってわかって、ある程度覚悟はできてたから」
「……」
「だからそれがたまたま今日、形になって、目の前に現れただけ。
頭の中で描いていたことを、改めてこの目で再確認しただけ。
……ただ、それだけのことだから…… 」
私はズルいから……もしもこの場にいたのが私ひとりだったら、現実を受け入れることができなくて、今日のことも見なかったことにしてしまったかもしれない。
「う……っ。うぅっ……、七瀬~……っ」
「あ、こらぁっ、なんで麻優が泣くのよぉ」
「だって、だって~……っ」
私は弱虫だから……麻優が泣いてくれなかったら、みっともなく大声をあげて泣き崩れてしまっていたかもしれない。
涙をクリクリの瞳いっぱいに溜めた麻優が、私の手に自身の手を重ねてくる。
その小さくて可愛らしい手がとてもあったかくて。
どうしようもなく悲しみに打ち震えている私の心を、そっと包み込んでくれたような、……そんな気がした。