キスから始まる方程式
「体調はもう大丈夫なのか?」
「あ、うん。体も足もすっかりよくなったよ。部活だってもうバリバリできちゃうもん」
「ハハ、そいつは頼もしいな」
ここ数日の悪夢のような出来事がまるで嘘だったみたいに、互いに笑顔で普通に会話を交わす私と桐生君。
なんだか幸せだったあの頃に戻ったような、そんな錯覚まで起こしそうになる。
ずっとこうしていたい。
ずっとこのまま、桐生君の隣で笑っていたい。
明日も、明後日も、その先もずっとずっと……。
「もうすぐ最後の大会だから、ラストスパートかけて頑張らないとね」
「あぁ、そうだな。いよいよ最後だもんな。試合頑張れよ」
「うん、任せといて!」
桐生君が私に笑いかけてくれるたび、口に出して聞いてしまいそうになる。
ねぇ、どうしてそんなふうに笑うの?
どうして私に、笑顔を見せてくれるの?
どうして翔とのこと、何も聞かないの?
「まぁでも、その前に期末試験をクリアしないとだけどな」
「う……、忘れてた……」
「だと思った。七瀬らしいな」
優しい笑顔を見せてくれるたび、次から次へと想いが溢れ出して止まらなくなる。
どうしよう。
どうしよう、私……やっぱり……