キスから始まる方程式
―― 桐生君が好き
桐生君が工藤さんのことを想っていても、それでもやっぱり私、桐生君のことが大好き……。
改めてそんなことに気が付いちゃうなんて、私ってホントばかだな。
さよならするのが、余計辛くなるだけなのに……。
今日で最後なのに。
もうこれで、桐生君とお別れしなくちゃいけないのに……、そう、自分で決めたのに……。
なのに目先の感情にとらわれて、おもわずそのまま流されそうになる。
もしこのまま私が何も言わなければ、今までみたいに恋人同士として関係を続けて行けるんじゃないかって。
私さえ気付かない振りをし続ければ、桐生君のことを繋ぎとめておくことができるんじゃないかって。
たとえそれが、上辺だけの関係だとしても……。
でも、それでもいい。……それでもやっぱりそばにいたい。
桐生君のそばにいられるなら、それでもかまわない!
完全に自分を見失ってしまい、気持ちがもう抑えきれない。
そんな我を失った私が隣に座っている桐生君へ無意識に手の伸ばしかけた時、不意に私の頭の中に、桐生君と工藤さんが幸せそうに並んで歩いていた昨日の光景が映し出された。
キラキラと眩しいくらいに輝いていた二人の笑顔。
その笑顔と今目の前にある桐生君の笑顔がパチンと重なり、次の瞬間、私はまるで夢から覚めたみたいにハッと我に返った。