キスから始まる方程式
彼女じゃなくなった私は、桐生君の何なのかな。
にわかに湧いた自らの問いに、浮かんだ答えは“元彼女”という文字。
じゃあ元カノって、距離で表すとどのくらいの位置にいるんだろう?
友達よりも遠い? 他人と知り合いの間くらい?
ううん、もしかしたらもっと、他人よりももっとずーっと遠い存在なのかもしれない。
―― 誰よりも一番遠くて、手の届かない存在。
そう思った瞬間、不意に私の瞳に大粒の涙が溢れてきた。
ばか……っ、こんなところで泣いたら、桐生君に嫌な思いさせちゃう……!
「美奈ちゃん、私部室に忘れ物してきちゃったからちょっと行って来るね!」
「了~解! いってらっしゃ~い」
私は慌てて立ち上がりノートに釘付けになっている美奈ちゃんにそう告げると、桐生君に涙を見られないよう気を付けながら教室を飛び出した。