キスから始まる方程式
「本当は嫌いになったわけじゃないんだろ?」
「そ、そんなことない!」
なんで? なんで翔にバレちゃったの?
「今までだってほら、私付き合った男の子のことすぐ嫌いになっちゃって、よく別れたりしてたじゃない」
「七瀬」
「だからそれと一緒で、桐生君のことなんてもう……っ」
「七瀬っ!」
「っ!!」
見上げた翔のアーモンド形の瞳が、真っ直ぐに私の瞳を射抜く。
「俺がお前のこと、ガキの頃からどれだけ見てきたと思ってんだ?」
「……っ」
「七瀬が嘘ついてることくらい、……七瀬が苦しんでることくらい、一目見ればすぐわかる」
「翔……」
どこまでも曇りの無い、翔の澄んだ瞳から目が離せない。
心臓が早鐘を打つように騒ぎだし、どうしたらいいかわからなくて私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
キーンコーンカーンコーン……
「あ……っ」
その時学校中に、ホームルームの開始時刻が迫ったことを告げる予鈴のチャイムが鳴り響いた。
「も、もうホームルームが始まっちゃう……っ。教室に戻らないと……っ」
天の助けとばかりに慌てて翔から顔を背け、ジリ……と一歩後ずさる。
しかし……
グイッ
え……?
次の瞬間、翔の腕が伸びてきたかと思うと物凄い力で私の腰を引き寄せ、気が付くと私は翔に抱きしめられていた。