キスから始まる方程式
「七瀬……好きだよ……」
内から溢れ出しそうな想いを込めて、私の耳元で囁くように愛の言葉を奏でる翔。
熱い吐息が私の紅潮した頬を優しくかすめ、より一層私の胸を熱くした。
ドキドキと高鳴る鼓動。
あれほど恋い焦がれた翔が、今私の目の前にいる。
長い間手が届きそうで届かなかった翔が、今度は両手を広げて私のことを受け止めようとしてくれている。
もしかしたらこれは夢なのかもしれない。
決して現実には起こりえない儚い夢……。
そう思えるほど、私にとっては長年待ち望んでいた光景だった。
そっか……。 ようやく叶うんだ、私の願い……。
なんとなくしっくりとこず、実感がわいてこない。
けれど……
ちょっとだけ遅かったけど、そんなのきっとすぐに気にならなくなっちゃうよね。
だって、あんなに大好きだった翔が相手だもん。
だからきっと大丈夫。
なんにも心配する必要なんてないんだよね。
改めて確認するように「そうだよね」と心の中で小さく呟く。
そして私は閉じていた目を薄っすらと開け、消え入りそうな声で翔に告げた。
「翔……。 私…… 私ね…………―――― 」