キスから始まる方程式


「桐生君……」



思いがけない桐生君の登場に、驚きのあまり呆然と立ちすくむ私。



な、なんで? なんで桐生君がここに!?



わけがわからず、頭の中は混乱するばかり。


しかしそんな半パニック状態の私の中に、突如ある言葉が浮かんだ。



あ……“約束”……。



その二文字を思い出した途端、凍りついていた私の胸がドキリと高鳴る。



もしかして桐生君、約束果たしに……来てくれた……?



先程そんな現実はありえないと自分自身で再確認したばかりなのに。


でも、もしかしたら……という思いが私の頭をチラチラとかすめる。



ここに来たってことは、その可能性だってあるよね……。



どうしてもその思いが捨てきれなかった私は、気が付くと桐生君に疑問の声を投げかけていた。



「どうして……ここに……?」



ドキドキと加速する胸の鼓動が、どんどん熱を増して行く。




しかし私の中に芽生えた淡い期待は、桐生君の一言によって呆気なく砕け散った。

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