キスから始まる方程式
どうしよう……。
迷う心に戸惑い、すがりつくように再び桐生君の顔を仰ぎ見る。
そこにあったのは、相変わらず口を閉ざし、何事か難しい顔をしている桐生君の横顔。
けれどなぜかその表情からは、先程の気まずげな空気や困惑した様子は一切感じられず、むしろ揺るぎない決意のようなものさえ伝わってきた。
あ……。
思いも掛けないその様子に、萎縮していた胸がキュンと締め付けられる。
やっぱり、やっぱり私……っ!
桐生君への想いが奥底から溢れ出す。
それと共に、私の中にどんな現実でも全てを受け入れる覚悟が芽生えたのを、確かに感じたのだった。
ここで逃げたら、また翔の時と同じじゃない! たとえ辛い結果だとしても、今度こそちゃんと受け入れなくちゃ……っ。
ピンと張りつめた空気が2人を包み込む。
間もなく告げられるであろう真実を、そしてその時を、私はただただ静かに待った。