キスから始まる方程式
「私、桐生君の彼女失格だよ……っ」
「七瀬……」
己の不甲斐なさに、止まっていた涙が再び瞳いっぱいに溢れ出し、ツッと一筋頬を伝い落ちた。
「泣き虫」
「っ!」
そう言って桐生君が、右手の親指の腹で私の頬を撫でるようにグイッと涙を拭う。
「言ったろ? 俺は七瀬がいい、七瀬じゃないとダメなんだって」
「……っ」
「だからもう、彼女失格とかそんなこと言うな。
俺の彼女になる資格は、世界中でただ一人、七瀬しか持ってないんだから」
「桐生く……っ」
頬を赤らめながら、ニカッと優しくはにかむ桐生君。
疑う余地のない愛情いっぱいのその笑顔に、胸の奥がキュンと音を立てた。