キスから始まる方程式
「ふ~ん、なるほどね」
事の経緯を一通り聞き終えた桐生君が、神妙な面持ちで大きく息を吐く。
そうかと思うと今度は、右手の親指と人差し指で顎を何度もさすりながら、意味ありげに口を開いた。
「だからあの時七瀬、俺にあんなこと言ったのか」
「あの時?」
前に私、何かおかしなこと言ったっけ?
記憶の糸を辿ってはみたものの、これといって特に自分の言動に心当たりがない。
わけがわからず、私はきょとんとするばかり。
そんな時不意に、桐生君が顔をスッと寄せてきた。
わわわっっっ!!!
突然のことにビックリし、おもわず目を瞑ってしまう私。
も、もしかして私、こんな道のど真ん中でキスされちゃうの!? さすがにそれってば大胆過ぎるとゆ~か、恥ずかしいとゆ~か……。
当然周囲にはまだ、下校途中の生徒もちらほらと見受けられる。
そんな中で期待半分、羞恥半分でドキドキしながら固まっていると
「ホ・テ・ル」
意に反して、ゾクリとするほど艶やかで低い桐生君の声が耳元で響いた。