キスから始まる方程式


「ホ、ホホホホッ!!!?」



ボンッ!



“ホテル”という単語を聞いた途端、一瞬にして頭のてっぺんから足の先まで全身が真っ赤に沸騰した。



“ホテル行こうよ”



できることならば消し去りたい忌まわしい記憶が、たちまち脳裏に蘇る。



言った!色々あってすっかり忘れてたけど、 確かに私、そんなとんでもない言葉、桐生君におもいっきり言っちゃってたよ!!



あの時はとにかく気が動転した勢いで、後先も考えずにあんなことを言ってしまったけれど。


今思い出しただけでも、本当に顔から火が出るほど恥ずかしい。


穴があったら入りたいとはよく言うけれど、まさに今その状況である。



嫁入り前の、しかもまだ女子高生の女の子が自分からあんなこと言うなんて、私ってば私ってば!



頭の中でポカポカと自分の頭を叩きながら、ひたすら後悔の念を心の中で繰り返す。



んもう! よりにもよって桐生君の胸に、ホクロなんかあるからいけないのよ。ホクロさえなければあんなことには…… って……、あれ?



半パニック状態だった思考回路が、“ホクロ”という単語に反応し緊急停止する。



そういえば、工藤さんはなんで桐生君の胸にホクロがあること知ってたんだろう?



自ら気付いてしまった矛盾点に、再びじわりと不安な気持ちがわき上がってくる。


同じ学校なら水泳の授業などで見る機会もあっただろうが、残念ながら二人は別々の中学出身だ。

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