キスから始まる方程式
考えれば考えるほどわからなくなってくる。
やっぱり二人は私に隠し事して……
そう思いかけた時、突然プ二っと右頬をつつかれた。
「はうっ!」
ビックリして慌てて桐生君を振り仰ぐ。
唐突な桐生君の行為に「何すんのよ」と言いかけた私の言葉は、けれど彼の唇によって言葉ごと塞がれてしまった。
「んっ!?」
一瞬触れるだけのキスだったけれど、冷めかけていた体が恥ずかしさでまたしても大沸騰を引き起こす。
ま、まさか本当にこんなところでされちゃうなんて! さっきは大丈夫だったから油断した~!
挙動不審人物のように、慌ててキョロキョロと周囲を見渡す。
特に驚いた様子の人がいないことからして、幸い誰にも気付かれなかったようだ。
ふうっ、と胸を撫で下ろし、改めて桐生君に抗議する。
「こんな目立つところでキ、キスとか……っ、ありえない!」
相変わらず動揺マックスの私とは対照的に、桐生君はこれっぽっちも悪びれたふうもなく、むしろ不満気に唇を尖らせる。
「だってよ~、七瀬がキスしてほしそうだったから」
「なっ!? 私そんなこと一言も言ってないもんっ」
「まぁ確かに言ってはないけど、ちゃんと書いてあった」
「? 書いてあったって、どこに?」
「顔に。『私は今すっごく不安です』ってさ」
「っ!!」