キスから始まる方程式
「昔、塾の休憩時間に凛と話してた時に、つい手が滑って飲んでたコーヒー、服におもいっきりぶちまけちまったことがあってさ」
「コーヒー……。桐生君てば昔っからマセてたんだね」
「なっ!? そこ突っ込むか!?」
私からおもわぬ不意打ちをくらった桐生君が、真っ赤な顔で声を荒げる。
「まぁまぁ、それで?」
反論してくる桐生君を軽くなだめつつ話の先を促す。
なおも不服そうではあるものの、仕方なしとばかりに再び桐生君が話し始めた。
「ホットコーヒーだったからすっげー熱くてさ、慌てて着てた服全部脱いだんだよ。おかげで運よく軽い火傷ですんだんだけど」
「全部ってまさか……パンツまで脱いだの……?」
「パッ!? バッカ! 下まで脱ぐわけねーだろ!? 上半身だけだっつ~の!」
再びギャンギャンとまくし立てる桐生君をよそに、私の中で凝り固まっていた疑問がようやくゆっくりと溶けて行く。
「そっかぁ。その時工藤さんは桐生君の裸見て、それで胸にホクロがあるの知ってたのかぁ」
久々の晴れ晴れとした解放感から「うんうん、そっかそっか」と1人満足気に何度も頷く私。
すると、そんな私を見た桐生君が一転、突如余裕たっぷりの表情で私の耳元に唇を寄せてきた。