キスから始まる方程式


「そ、それっ……!」



手のひらサイズの大きさに、赤い水玉のビニールカバー。


間違いない。私が探していた手帳だ。


私の赤く火照った顔が急激に青ざめて行く。



どうしよう!? やっぱり拾われちゃってたんだ!



二月で氷が張るほど寒いはずなのに、私の額にはうっすらと汗が浮かび始めていた。



中身……見られた……?



半ばパニック状態の心を必死に抑え、冷静になろうと努める。



でもでもっ、プライベートなことが書いてあるから見ちゃ悪いよな~、なんて思ってくれて、もしかしたら見てないってこともあるかも……?



そう思った私は、とりあえずあるかどうかもわからない彼の『紳士的精神』に期待をし、中を見ていない方に賭けることにした。
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