キスから始まる方程式


え…… えぇっ!? やだ、どうしようっ……!



「やめてっ瀬戸君……!」

「嫌だっ! 七瀬は俺のものだ!」

「っ!」



必死にもがく私を、それ以上の強い力でギュッと抱きしめてくる瀬戸君。


力の差があり過ぎて、どうしてもこの腕から逃れることが出来ない。



「んっ、離して……!」

「ダメだ! もう離さないっ……」

「苦し……やだっ…やめて……っ」



『あとで困ったって、俺は知らないからなっ』



昨日の翔の言葉が、不意に私の頭の中に蘇った。



私、バカだっ。翔の言った通りになっちゃったよ……!



今更ながら、激しい後悔の念が私を襲う。



自分が悪いってわかってる!でも、お願いっ。こんなのやだっ……!


……翔……翔……助けて……! 翔っ!!



祈るようにギュッと目を瞑った瞬間



グイッ



え……?



突然瀬戸君の腕が私の体から離れ、苦しさから解放された。



な、なに……? もしかして、本当に翔!?



慌てて固く閉じていた瞳を開く。


しかし大きく見開いた私の目に飛び込んで来たのは、翔ではなく桐生君の姿だった。
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