キスから始まる方程式
「桐生君!」
「てめぇ、俺の女に何してんだよ」
思わず怯んでしまうくらい凄味の聞いた声と鋭い目つきで、瀬戸君の肩をつかみながら睨みつける桐生君。
「お、お前は……桐生冬真!? な、なんで七瀬がお前の女なんだよっ」
瀬戸君が明らかに動揺した様子で桐生君につっかかる。
瀬戸君、桐生君のこと知ってるんだ……。
麻優が言ってた、桐生君のこと知らない人なんてほとんどいないほど有名人っての、やっぱり本当なんだ……。
私がのん気にそんなことを考えている間にも、桐生君と瀬戸君の修羅場は続いてゆく。
「七瀬の彼氏は俺だ!」
語気を荒げて、そう桐生君に言い放つ瀬戸君。
そんな瀬戸君を揶揄するように、桐生君はニヤリと不敵な笑みを浮かべて挑発的に呟く。
「彼氏じゃなくて、『元』彼氏だろ?」
「な……んだとぉっ!?」
顔を真っ赤にして怒りに震える瀬戸君が、更に声を荒げてとんでもないことを言い出した。