キスから始まる方程式


「あんたのことは、七瀬からよーく聞いてるよ」

「え!? ちょ、ちょっと……!」



桐生君に翔の詳しい話をしたことなど、もちろん一度もない。


しかし、あからさまに翔を揶揄するような桐生君の態度に翔も黙っていなかった。



「なんだと? 七瀬、こいつとどーゆー関係なんだよっ」

「え? あ、あの……どーゆー関係って言われても……」



明確に付き合っているというわけでもないし、ましてや『キスした関係です』だなんて口が裂けても言えるはずがない。


もごもごと口ごもる私の代わりに、再び口を開いたのは桐生君だった。



「七瀬は俺の女だけど」

「な……!?」

「えっ!?」



桐生君の爆弾発言に、一瞬固まる翔と私。



なんで……、なんで翔にそんなこと言うの!?



私の心の中は、桐生君への抗議でいっぱいだった。
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