キスから始まる方程式
しばらくの沈黙のあと、翔が驚きに目を見開いたまま私へと視線を移す。
「七瀬、本当……なのか?」
「えっと、これは、その……」
翔に私の気持ちをバラされたくなくて、ハッキリと否定することができない。
そんな私の様子を肯定と取ったのか、翔がつかんでいた桐生君の腕を離し踵を返した。
「か、翔……っ」
やだ……、完全に勘違いされた……!?
「悪かったな……」
「え?」
私達に背を向け、下を俯いたまま翔がポツリと呟いた。
「こいつ、ものすごい意地っ張りでいっつも強がってばっかいるけど……、実はすげー泣き虫だから……。
泣かさないでやってくれよな……」
「翔っ……!」
「あぁ、ご心配なく」
それだけ言うと、後を追う南條さんと共に足早に学校へと消えて行った。