キスから始まる方程式


「翔……」



先程の翔の言葉が、私の胸の奥に響いている。



なんで……なんでそんなこと言うの……?


なんでこんな私のこと心配してくれるの……?



胸の中に広がった波紋は大きな輪を描いてどんどん大きくなり、より一層私の胸を切なく締め付けた。



「ったく。お前も馬鹿力だけど、あいつも相当の馬鹿力だな」

「……っ!」



そう言って桐生君が、自分の腕をいたわるようにさすっている。


よく見ると、翔につかまれた部分にはくっきりと手の跡が赤く残っていた。



「なあ、あいつ本当に南條の彼氏なのか?」

「え……?」



言っている意味がわからない。



「……っつーかさ、本当に南條のことが好きなのか?」

「っ!?」



相変わらず腕を痛そうにさすりながら、いきなり桐生君がおかしな質問をしてきた。
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