キスから始まる方程式


翌日の放課後。



「七瀬~! 一緒に帰ろっ」

「麻優」



今日は部活が休みの日である。


一日の授業を終えると同時に、隣のクラスの麻優がH組の教室へ私を誘いに来てくれた。



「ごめん麻優。今日は私、寄ってくとこがあるから」

「寄ってくとこ?」

「う、うん、ちょっと……」



目を合わせずにあらぬ方向を見ながら行き先を濁す私に、麻優が怪しいとばかりにまっすぐに見上げてくる。



「はっは~ん。その顔はもしかして、バレンタインの買い物かな~?」

「!」



ギクッ



クリクリとした目を細めながら、ニヤリと意地悪げに微笑む麻優。



「え? いやっ、それは……その……っ」

「もう2月14日まで日がないもんね~。風間君のためにもし~っかり準備しておかないとね~」

「わ、私はべつに……っ」

「まぁまぁ、いいっていいって」

「麻優!」



ひとしきり私をからかった麻優が、イタズラっ子さながらに可愛い舌をペロリと出した。
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