キスから始まる方程式
「まあ冗談はさておき、私も買い物付き合ってあげたいんだけど、今日は用事があるから真っ直ぐ帰らなきゃいけないんだ」
「うん、そっか」
「残念だけど、ひとりで頑張っておいでね」
「なっ!? が、頑張るって何をっ!?」
「さ~? 何でしょうね~?」
クスクスと笑いながら、またしても私をからかうように麻優が呟く。
そのまま「じゃあまたね」とパチンとウインクをし、慌ただしく教室から出て行った。
「んもう麻優ってば!」
翔のことになると、いつもこんなふうに私をからかってくる麻優。
どこまで本気で言っているのか、親友の私でもイマイチよくわからない。
本当は、私の気持ちに気付いてるとか……?
ひとつひとつの言動を振り返ってみると、なんとなくそんな気もするのだが……。
「っと……! 私も早いとこ買い物に行かなくちゃ」
左手首にはめた腕時計で時間を確認する。
一度は気をそがれてしまったものの、そんな自分に再び気合を入れ直し、私も麻優のあとを追うように教室をあとにしたのだった。