キスから始まる方程式
「どうしようかな。去年は生チョコあげたんだよなぁ。今年はチョコ味のマフィンとかがいいかなぁ……」
あれやこれやと思案しながら、玄関を出て校門を抜ける。
すると……
「な~なせっ」
「?」
腕組みをしながら校門の石塀に寄りかかるようにして立っていた桐生君が、私に声を掛けてきた。
ゲッ、桐生君!
トラブル男の登場に、反射的に私の顔が一瞬くしゃりと歪む。
そんな表情を悟られまいと、すぐさま笑顔を取り繕い桐生君に話しかけた。
「な、何か用?」
「何か用って冷たいなぁ」
拗ねるような声音で答えながら、桐生君が歩み寄ってくる。
「お前今さ、俺のこと見て『ゲッ』って思っただろ」
「っ!?」
私の顔を覗き込みながら、またしても私の心を見透かしたようにニヤリと笑う桐生君。
な、なんでわかっちゃうの!?
まるでエスパーのように、毎回私の気持ちを言い当ててしまう桐生君が不思議でならなかった。
桐生君が鋭いのか、それとも単に私がわかりやすすぎるのか……。
まぁ、いくら考えたところで私にはわかるはずもないのだが。