キスから始まる方程式
「まぁそんなに嫌そうな顔するなって」
「う……」
「もう帰るんだろ? 一緒に帰ろうぜ」
そう言って桐生君が、極自然に私の肩に腕を回してきた。
「っ!! なななな、なにすんのよ!?」
「んあ?」
ここ、こいつ、絶対ものすごい女慣れしてる!!
驚いた私は弾かれるように桐生君の腕を振り払い、たまらず一歩距離を取った。
「恥ずかしがることないじゃん」
「は、はずっ、恥ずかしいとかそんな問題じゃないわよっ……!」
真っ赤になって怒鳴る私に、桐生君が「ちぇっ」っと残念そうに眉をひそめる。
ダメだ……。桐生君のノリについていけない……っ。
そう思った私は、また何かされる前にと
「私、用事があるからっ」
急いでそう冷たく言い放ちスタスタと歩き始めた。