君とふたり暮らし。

⑥亮太 ――キス。

 なんでこんなことになってんだ?
 いつの間にか佐倉さんの顔がすぐ目の前にあった。鼻が微かに触れている。キス、しちゃおうかな。―――いや、いくらなんでも同じ職場の子に手を出すなんて。気まず過ぎる。絶対面倒臭いことになる。ヤバイ。でも・・・こんな可愛い子を目の前にして、俺、何もしないの?もったいなくない?
 俺は暫く葛藤していた。モヤモヤして、鼻を少し揺らした。佐倉さんの鼻と触れてくすぐったい。あ~!!どうしよう。
 自分からするのは嫌だった。ここまできて、なんか負けた気がするから。でも二人の唇の間には1センチくらいの隙間しかない。どうする、俺!?とか何とか考えてると、不意に唇に何かが触れた。でもそれは、佐倉さんの唇より少し横の所。
 あせった~。でも、ちょっと面白い。佐倉さんがじれったそうにしてるのがわかったから。俺ってドSだな。って俺も、ドキドキしてんだけどね。もう1回してみよ。唇の横に。
 散々、焦らして・・・というか葛藤して、唇の横に何回か口付けた。そしたらいい加減、我慢の限界か?
 ―――ちゅっ。佐倉さんから、キス、してきた。
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