君とふたり暮らし。

「あぁ～もう店長マジでうざいよー。」
　仕事が終わって第一声は大抵皆がこう口走る。まあ、店長にも立場があるから怒ったりするのはしょうがないんだろうけど。30代・独身・彼氏募集中、の彼女は何かひねくれている感じがする。
「あっ、お疲れー。珍しいじゃん、ここ来るの。」
「今日は暇だったんでー。」
　そう話すのは芦田くん。彼と勤務中以外に顔を合わすのは初めてかもしれない。彼は私の斜め前の席に座って、煙草を吸い始めた。
「あっ、芦田くん、携帯教えてよ。」
　私の隣に座っていた同僚が彼に話しかけた。別に深い意味はないのだろう。彼女の携帯にはほとんどのスタッフの携帯番号が登録されてある。
「はい、これ。」
　彼女は芦田くんから携帯を受け取り、自分の携帯に登録している。そして芦田くんは彼女から携帯を返してもらうと、次に私に向かって差し出した。私は別に聞いてないんだけど、と思いながらも、断るのは変かなと思い自分の携帯を取り出した。
「俺のメアドすっげー簡単だろ？メールで番号送っといて。」