君とふたり暮らし。

③潤 ――電話から。

 今日もいつも通り勤務を終えて、私は電車に乗っていた。自宅までは40分くらいかかる。毎日この距離を通勤するのは結構しんどい。寄り道せずに帰っても、家に着くのは23時過ぎだ。
 自宅の最寄り駅に着き電車を降りると、突然携帯が震えだした。画面には―――芦田亮太。見慣れない名前。
「もしもし?」
 芦田くんからの初めての電話。今大丈夫かと聞かれた。何の用だろう。
「うん。今仕事から帰ってきて、電車降りたとこなの。」
「そーなんだ。ちょっと聞いて欲しいことあるんだけどー!」
 何?と耳を傾ける。芦田くんは今日、原付でガソリンスタンドへ行ったらしい。店員は一人しかいなくて少し混んでいたので、並んで待っていたそうだ。やっと自分の番というときに、店員は間違えて後ろの人のガソリンを入れ始め、少しイラッとしたが仕方なく待っていた。すると、いかにもって感じのフルスモークの真っ黒なベンツが来て、店員は芦田くんの方をチラッと見てそちらを優先したとか。
「すっげームカつかない?その店員。舐めてるよな、仕事を。てか俺を。」
 芦田くんは相当腹が立っていたのか、妙にテンションが高かった。
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