ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
 私はゆっくり首を振る。

 それをみて、かおりは目をつむりながら続ける。

「優子がさっき教えてくれたことだけどさ」

 その言葉に、私は今朝のことを思い出す。

 寝る前に決めたとおり、みんなに私のことを、全部話した。

 後悔はしていない。

 いまは少し恥ずかしいけれど。

「うん」

「ずっと考えてたんだけど」

 かおりはゆっくりまぶたを開いた。

「優子の見つけたいものは、すごく複雑で、たくさんあって、その一つ一つが絡み合ってて。見つけることはとても難しいと思う」

 真実を快活な口調でよどみなく続ける。

「でもね。その、優子の見つけたいものって、この空の向こうで私たちを見てる人たちと、きっと同じだと思うの」

 じつは、わたしも今そう思ったところだった。

 こうして大地に背中をつけながら、空だけを見ていると、なぜだか、私はそのために存在しているような気さえしてくる。

「すべての物語に終わりがあるように、きっと私たちの物語にも終わりが来るのよ。わたしね、物語はハッピーエンドじゃないと嫌なの。だから絶対に見つけよ。笑顔でラベンダー荘を卒業できるように。この空の上の人たちに誓おう」

 私とかおりは寝転んだまま、空に手を伸ばす。

 そして自然と笑いが漏れる。

「なにやってるんだろうね」

「さあね」

 
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