ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
体中が痛い。
足首と股関節はずいぶん前から、ひざの骨は山を降りた辺りからずっと痛い。
極度の疲労のせいもあって、肺でうまく呼吸できない。
頭痛がして、吐き気もする。
かおりは、少し前の地面を睨みながら、必死で足を動かしていた。
(だいぶ歩けるようになったと思ったけど、わたし、まだまだね)
かおりは情けなくなってきて、涙がにじんできた。
自分の甘えに気づいてから、躍起になって毎日リハビリのウォーキングを繰り返してきた。
一歩踏み出すごとに、下半身に走る痛みと戦いながら。
(あんなにがんばったのに、まだみんなに追いつけないなんて)
かおりは、すたすたと歩いているみんなの気配を感じていた。
(私はいつになったら、みんなみたいに、元気に走れるようになるんだろう)
かおりは自分の考えを頭から押し出すように、ぎゅうっと目をつむった。
「かおり」
信也の声がして、かおりは目を開いた。
(そういえば、ずっと信也が隣を歩いてたんだ。変な顔してるの見られたかな)