ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)

 体中が痛い。

 足首と股関節はずいぶん前から、ひざの骨は山を降りた辺りからずっと痛い。

 極度の疲労のせいもあって、肺でうまく呼吸できない。

 頭痛がして、吐き気もする。

 かおりは、少し前の地面を睨みながら、必死で足を動かしていた。

(だいぶ歩けるようになったと思ったけど、わたし、まだまだね)

 かおりは情けなくなってきて、涙がにじんできた。

 自分の甘えに気づいてから、躍起になって毎日リハビリのウォーキングを繰り返してきた。

 一歩踏み出すごとに、下半身に走る痛みと戦いながら。

(あんなにがんばったのに、まだみんなに追いつけないなんて)

 かおりは、すたすたと歩いているみんなの気配を感じていた。

(私はいつになったら、みんなみたいに、元気に走れるようになるんだろう)

 かおりは自分の考えを頭から押し出すように、ぎゅうっと目をつむった。

「かおり」

 信也の声がして、かおりは目を開いた。

(そういえば、ずっと信也が隣を歩いてたんだ。変な顔してるの見られたかな)


< 81 / 92 >

この作品をシェア

pagetop