ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
「ほら」

 信也はそう言いながら、かおりの前に手を差し出した。

 それに、力なく微笑みながら首を振るかおり。

(最後まで、一人で歩かなきゃ意味ないから)

 それでも信也はかおりの手を握った。

 ゆっくりとかおりを引っ張ってやる。

「信也。私、へいきだから」

「ああ。」

 信也は手をつないで前を向いたまま、かおりに返事をした。

「今日みたいな日のために、歩く量増やして―――」

 かおりは信也の斜め後ろから訴える。

「―――いつも、頑張ってたんだから」

「ああ。分かってる」

 相変わらず、アキラの気持ちよさそうな鼻歌が聞こえてくる。

(アキラにこんなの見られたら、だらしないって思われる。それに、後ろには康孝さんと優子だっているのに)

「かおりが頑張ってるのは知ってるよ」

 信也は言い聞かせるような口調で言った。

「だから、協力したいだけだ」

「だったら、最後まで見届けてくれなきゃ」

「無理して、また体が壊れでもしたらどうする気だ?」

 信也の言葉が痛い。

「また最初からリハビリやり直したいのか?」

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